テーマ③ “目・眼・瞳”をとりまく雑学
あら不思議! ないのに見えるもの・・・なーんだ?

目をつぶると見えるもの?

さて寝よう。と布団に入って目をつぶると、抽象画のような模様が目の裏にチラつくこと、ありませんか? 部屋の明かりを消してまぶたを閉じ、暗い状態になってもカラフルに色付きだったりもしますよね? こどもの頃、このカラフルな模様が見たくて寝るときにうつぶせになり、枕にギュッとつぶった目を押しつけた思い出があります。
この模様にはふたつのタイプがあり、ひとつは網膜の毛細血管などを自分の目が見ているというもの。普段のまばたき程度では景色やものを見ることに集中しているため気付かないらしいのですね。そして、私の思い出バージョンはどうやら、閉じたまぶたや布団や枕の圧迫が視神経や網膜を刺激して、光が入ってきたと錯覚して見えるのだそうです。
眼底

明るいところで見える残像

前の2つタイプは暗いところで目を閉じたときに見えるもの。
反対に明るいところで目を閉じたときや何かをジッと見つめた後視線をそらすと見えるもの、ありますよね。これが残像。光を見たとき、その光が消えた後もそれまで見ていた光や映像が残って見える現象で、陽性(正の)残像と陰性(負の)残像のこちらも2タイプあります。
・ 陽性残像(正の残像)
花火を見たときなど、花火が消えた後も同じ明るさと同じ色相で見える残像。残像が現れる場所が暗いか、光の刺激が短いときに現れやすいようです。
・ 陽性残像(正の残像)
鮮やかな色(物体や人)を見つめた後で明るい灰色や白い空間に視線を移したとき、もとの色とは明るさも色相も逆に見える残像で「補色残像現象」とも呼ばれます。
色相環

残像現象を体験しよう!

下に、「あら不思議。マスカットが巨峰に!」という象徴的な補色残像現象体験の絵を掲載しているので、ぜひお楽しみください。
私たちの眼は、ある特定の色を長く見続けると、その色の波長に対する感度が低下し、結果として逆の波長の色に対する感度が高まるのだそうです。それが白や明るい灰色の上に残像として現れるわけです。
この補色残像現象について初めて指摘したのが、有名なドイツの詩人ゲーテだという面白い話があります。ゲーテは20年という長い歳月をかけて色彩現象についての研究を重ね『色彩論』という著書も著しているのですが、補色残像現象を発見したきっかけは、なんとカフェで見かけた美しい赤いドレスのご婦人だそうな。じっと見惚れた赤いドレスの女性が立ち去った後も、青緑色のドレスを着た女性が立ち続けているように見えたというのですね。さすが世界的な詩人、発見のエピソードもなにやらロマンチックなお話しです。
あら不思議。マスカットが巨峰に!