テーマ② 加齢黄斑変性症
モノの形が歪んで見えたり、色の見え方も変わってしまう目の病気「加齢黄斑変性症」

前回、この章で加齢が大きな要因のひとつとして良く知られている二つの目の病気のひとつとして白内障を取り上げました。今回はもうひとつの加齢黄斑変性症についてです。モノを見るときに重要な働きをする黄斑という組織が、加齢と紫外線などによる眼へのストレスからダメージを受け、視力の低下などを引き起こすのが加齢黄斑変性症です。

「黄斑」の異常が引き起こす「加齢黄斑変性症」

「黄斑」は網膜の最奥・中心部にあり、ここに萎縮や異常が起こると視力の低下だけでなく、モノの形が歪んで見えたり、色の見え方も変わってしまったりします。下図のように黄斑の中央部には小さなくぼみがあり、この部分は「中心窩(ちゅうしんか)」と呼ばれます。この中心窩に異常がおよぶと視力の低下は急速に進むため、早急な治療が必要となります。
● 加齢黄斑変性症のおもな症状
変視症 : ものが歪んで見える
中心暗点 : 視界の中心部が黒く見えたり、欠け落ちて見えなかったりする
色覚異常 : 色の区別がつきにくい、色がにじんで見える
視力低下 : ものがはっきり見えない
加齢黄斑変性(滲出型)のメカニズム
加齢黄斑変性(滲出型)のメカニズム
● 加齢黄斑変性症の種類
「萎縮型」加齢黄斑変性
加齢やストレスによって網膜色素上皮細胞とブルッフ膜の間に老廃物がたまり、網膜の組織が徐々に萎縮していきます。進行は緩やかで視力低下も急激ではありませんが、発症してからは定期的に通院して検査を受ける必要があります。
「滲出型」加齢黄斑変性
網膜のすぐ下に正常な網膜にはない新しい血管ができて、黄斑に悪い影響を及ぼします。新生血管は非常にもろいため、成分が漏れ出たり、出血しやすく、この血管から滲出した液体が黄斑組織にダメージを与えます。
加齢黄斑変性(滲出型)のメカニズム
加齢黄斑変性(滲出型)のメカニズム

黄斑の異常を「アムスラーチャート」でセルフチェック

さて、あなたは左右の目で、見え方に違いはありませんか?
人間には2つの目があるため、かりに片方の目に異常が始まっていても、正常なもう片方が異常を補ってしまうため日常生活では気付きにくいこともあります。簡単に自己診断できる下の「アムスラーチャート」でセルフチェックをしてみましょう。
アムスラーチャートを使ったセルフチェックのやり方
  • ① 画面から30cm離れたところから見てください。
  • ② 片方の目だけで見てください。
  • (メガネやコンタクトを使用している方はしたままチェックしてください)
  • ③ 下の図の格子の中心にある丸い点を見つめてください。
  • ④ このときの格子の見え方をチェックします。
※スマートフォン、タブレットでは正確なチェックはできません。
PCまたは以下のリンクよりチェックシートをダウンロードし、印刷のうえご利用ください。
アムスラーチャート

格子が下の図のように見えた方はすぐに眼科を受診してください。

※普段は両目で物を見るので、片目の変化には気が付きにくいものです。(アムスラーチャート)を使うと、自分で見え方の変化に気が付く事ができます。格子状の線がゆがんだり、中心が暗く見えたり、真ん中が欠けて見えたりした人はすぐに眼科を受診しましょう。
ゆがむ
真ん中が欠ける
中心が見えない
白内障と同じく“加齢”を減らすことはできませんが、紫外線などによる眼へのストレス(『“目・眼・瞳”をとりまく過酷な環境』テーマ① 「紫外線」を参照ください)をできる限り減らすことで、発症のリスクを軽減することができます。
治療の前に予防が肝心。大切な眼を守るために、日常生活でも眼からの紫外線曝露を防ぐ、PCやスマホなどのブルーライトをカットするなど眼をいたわり、できるだけ長く眼の健康と機能を守り続けたいものです。